TNFD対応支援：自然とビジネスに関する基礎概念

自然関連財務情報開示タスクフォース（TNFD: Taskforce on Nature-related Financial Disclosures）では、自然関連の依存、影響、リスク、機会を特定・評価し、事業活動で「ガバナンス」「戦略」「リスクと影響の管理」「指標と目標」の4つの柱に基づいた情報開示が推奨されています。
開示にあたっては、自然、社会、経済がどのように相互作用し、環境資産がどのようにビジネスや社会に利益をもたらす生態系サービスを提供しているかを理解することが必要になります。

自然とビジネス

TNFDは、自然を理解するために活用できる基礎概念を提供しています。

社会には人々、企業等が構成員として含まれており、人間は自然の一部であることを意味しています。森林、湿地等を含む環境資産のストックで構成されている自然資本が、人々に恩恵をもたらす生態系サービスを提供しています。

TNFDでは下記ように定義されています。

生物多様性

陸生、海洋、その他の水生生態系、およびそれらが属する生態系複合体を含む、すべての発生源からの生物間における多様性。これには、種内、種間、および生態系の多様性が含まれます。

自然、自然の領域

自然とは自然界を指し、人間を含む生物の多様性、生物相互の相互作用および環境であり、陸、海、淡水、大気の4つの領域で構成されています。

バイオーム

簡単にいえば、生態系のタイプとして考えることができます。これらは、地球規模のゾーンであり、一般に、平均的な降雨量と気温のパターンに応じて育つ植物の種類によって定義されます。

自然資本、環境資産、生態系資産

自然資本とは、植物、動物、空気、水、土壌、鉱物等の自然によって形成される、再生可能および再生不可能な天然資源の資本（ストック）であり、それらが組み合わさって、人々に恩恵としての生態系サービスをもたらします。自然資本は、一方で、森林、湿地、サンゴ礁、農業地域など、天然に出現している生物および非生物の地球の構成要素である環境資産のストックで構成されています。
生態系資産とは、生物的および非生物的な要素の明確な組み合わせとそれらの相互作用を特徴とする、特定の生態系種類を表す環境資産の一種です。

生態系サービス

自然資本から発生する生態系が経済活動やその他人間の活動に利益をもたらす恩恵です。
例えば、森林での木材と薪の共有、サンゴ礁でのレクリエーションと観光の機会、洪水の緩和、作物の受粉などです。

生態系サービスの分類

TNFDで生態系サービスは、供給サービス、調整および保全サービス、文化的サービスの3つに分類されています。

供給サービス

森林からの木材や薪、川からの淡水など、人間の生活の重要な資源を供給するサービスを言います。

調整および保全サービス

森林があることによって気候が緩和されたり、洪水が起こりにくくなったり、水が浄化されたりといった、生態系の能力によって環境を制御・調整し保全するサービスのことを言います。このサービスは、企業や社会の安定性や回復力を高めることに繋がります。

文化的サービス

自然環境、生態系によって、精神的充足、美しい景観、宗教・社会制度の基盤、レクリエーションの機会などを与えるサービスのことを言います。

自然関連の依存、影響、リスク、機会

組織は自然に依存し、自然に影響を与え、これらは自然関連のリスクと機会をもたらします。

依存	自然に対する組織の依存。人間の社会や組織が機能するために依存している環境資産や生態系サービスの側面。
影響	組織によって引き起こされる自然への影響。事業活動等による自然の状態（質または量）の変化。その結果、人間が依存する社会的・経済的機能を提供する生態系サービスの能力が変化（プラスまたはマイナス）し、人間の社会や組織の活動の制約となる可能性がある。
リスク	依存と影響に起因する組織へのリスク。
機会	自然に対するプラス影響や、マイナス影響の軽減を通じて、自然に恩恵をもたらす組織にとっての機会。

出典：TNFD. Recommendations of the Taskforce on Nature-related Financial Disclosures, p26-30
　　　TNFD. Guidance on the identification and assessment of nature-related issues: the LEAP approach, P11